2015年12月29日火曜日

楽天Koboでも《望林堂完訳文庫》販売開始!

これまでAmazonのKindle向け電子書籍として販売していました《望林堂完訳文庫もうりんどうかんやくぶんこ》ですが、このたび、楽天の電子書籍Koboでも販売が開始されました。

内容、価格ともまったく同じですので、Kobo利用者の方々にも是非お手にとっていただけると嬉しいです。望林堂で検索していただきますと一覧表示されます。

現在のラインアップは、Kindleが15点でKoboが13点となっていますが、Koboの品揃えも同じく15点にしたいと思っております。少々お待ちください。


 Koboも専用端末となる電子書籍リーダーを出していますが、Kindle同様に、タブレット&スマホ(iOS、Android)、パソコン(Mac、Windows)でも読むことができる「楽天Koboアプリ」があります。読書環境に応じてご利用ください。
   
なお、現時点で「オズの魔法使い」のサムネイル画像が、検索結果画面で上手く表示されていませんが、販売ページに行きますときれいに表示されております。データ本体上の問題ではありませんのでご安心ください。
  



追記:無事修正されました!
  
  

2015年12月23日水曜日

「砂の妖精サミアド」本日発売!

《望林堂完訳文庫》第15弾となる最新刊「砂の妖精サミアド」が、本日販売開始となりました。Amazon Kindleストアからご購入いただけます。


内容紹介
 イーディス・ネズビット原作の「Five Children and It」の新訳&完訳です。 
 ケント州の田舎に引っ越してきたシリルたち五人の兄弟姉妹たちは、近くの砂利取り場で妖精を見つけます。妖精は「サミアド」と名乗り、一日一つ「願い事」を叶えてくれるというので、子どもたちは大喜びするのですが、思うようにいかず苦難の連続に。でも子どもたちは力を合わせながら、どうにかピンチを切り抜けてゆくのですが……。 
 豊かなイマジネーションと活き活きとした子どもたちの姿を描き、その後の児童文学やファンタジー小説に大きな影響を与えた傑作ファンタジーです。「おねがい!サミアどん」という日本のアニメーションの原作でもあります。 
 縦書き、ルビ付き、脚注付き。初版で使用されたハロルド・ロバート・ミラーのモノクロ挿し絵を52点収録。

さっそく販売商品をダウンロード購入してみて、Kindle paperwhite(Kindle)、iPhone(iOS)、Nexus(Android)の各プラットフォームで、あらためて動作確認をしましたが、問題なく「ルビ&脚注付き縦書き表示」されております。


 Nexus(Android)でKindleアプリを使って表示した様子。

「無料サンプル」もお試しいただけますので、ぜひお立ち寄りくださいませ。

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2015年12月17日木曜日

「願い事」の言葉は「wish」

「砂の妖精」は、五人の子どもたちが偶然妖精サミアドに出会い、「願い事」を叶えてもらえるという幸運を手にしながら、思うような「願い事」ができずにいろいろな騒ぎが持ち上がる物語です。

思うような「願い事」ができないというのは、「願い事」をしたつもりがないのに、勝手に「願い事」として叶えられてしまう、という行き違いによるものもあるのですが、それはサミアドが、子どもたちが「願い事」をしたかどうかの判断を、「wish」という言葉を使ったどうかで決めるからなのです。

これが日本語訳する上で難しくなります。日本語で「願い事」をする場合、いろいろな表現があるからです。

「〜したい」「〜して欲しい」「〜だったら良い(のに)なぁ」「〜してください」「〜をお願いします」などなど、日本語には「願い事」だと言える表現がたくさんあるのです。逆に言えば、一つの表現だけでは言い表し切れないとも言えます。

英語なら「wish」という一つの言葉を言うかどうか、思わず口にしてしまうかどうかという面白さがあるのですが、上記の日本語表現を全部「願い事」をする言葉だとしてしまったら、どうなるでしょう?

きっと、「願い事」の〝言葉を口にしたかどうか〟が、〝願ったかどうか〟という曖昧で幅の広いものになってしまい、どこからどこまでが「願い事」になるのか、物語の中の子どもたちや読者がわかりづらくなってしまうでしょう。

そこで今回の新訳では、多少の無理を承知で、この「wish」を「欲しい」としています。「欲しい」と言ったら「願い事」です。それにより子どもたちが願ってもいないのに「願い事」をしてしまった時の、「しまった、言っちゃった!」という感じが読者に伝わりやすくなっていると思います。

これまでの邦訳書にはない、今回のこだわりの一つです。どうぞお楽しみに。現在校正とルビ付け作業中です。発売まで今少しお待ち下さい。



2015年12月12日土曜日

「砂の妖精サミアド」表紙案

《望林堂完訳文庫》第15弾、「砂の妖精サミアド」は、年内の発売を目指して現在校正中です。H.Rミラーによる美しいオリジナルの挿絵53点も、ほぼ画像処理が終わりました。

そこで一足先に、表紙案を公開したいと思います。そのHR.ミラーの挿絵を用いたレイアウトです。まだ今後変更する可能性もありますが、一応現時点での表紙案ということでご覧ください。


2015年12月6日日曜日

Kindle購入書籍を最新版にする方法

Kidle書籍の場合、一度購入した本は改訂版が出た時には無料で受け取ることができます。以前ご紹介したように、「コンテンツの自動更新設定」をしておくと改訂版がアップされた時には、自動で最新データが送られてきます。

しかしこれは実は必ずというわけではなく、一応大きな変更があった場合に限られているようで、その線引きは曖昧なままKindle側に一任されている状況なのです。


そこでもっと確実に最新版にするには、こちらから申請するという方法があります。これなら更新内容の大小に関わらず、最新データが送られてきます。


ということで、「あしながおじさん」を例に、その方法を以下にご紹介します。


1 Amazonのページ(http://www.amazon.co.jp/)を開く


2 検索ウインドウの下に
 「マイストア ギフト券……」と並ぶ項目から
 「ヘルプ」を選ぶ




3 「端末とコンテンツ」を選ぶ



4 検索ウインドウの下の下に
 「Kindleストア Kindleを購入……」と並ぶ項目から
 「Kindleサポート」を選ぶ


 

5 左上の「カスタマーサービスに連絡」をクリック

 

 「お問い合わせの種類」で「デジタルサービス」を選択
 「お問い合わせ内容」で「Kindle本について」
 「詳細内容」で「購入したコンテンツをダウンロードできない」を選択


 

6 下部の「お問い合わせ方法」で「Eメール」を選択します。

7 詳細内容入力欄に以下の文章をご入力してください。


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書名:あしながおじさん
ASIN: B00LR0FZBG

以前このKindle本を購入しました。
最新の版を再ダウンロードをお願いします。

新しいバージョンにアップデートすると、現在保存しているハイライト、ブックマーク、メモおよび読み終えた最後のページ番号が削除されることを、私は十分に理解しており、それらを了解したうえで、最新版のダウンロードを申請します。

---------------------------------------------------------------------



 

8 「メール送信」をクリック

ちなみにASIN(書籍以外の商品識別コード)は、その商品の販売ページにある「登録情報欄」に書かれています。



以上です。


最初に述べましたように、残念ながらKindle書籍は、現時点では完全自動更新ではないため、必要に応じてこうしたちょっと面倒な手続きが必要ですが、よろしければおためしください。早ければ2〜3時間でお手元の端末に最新版が送られてくるはずです。
 
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2015年12月5日土曜日

Kindle Previewer起動!「あしながおじさん」第3版発売開始!

Kindle PreviewerがMac OS El Capitanで起動しなくなったことで、出版作業ができなくなっていましたが、本日Kindle側から対処法のメールをいただき試したところ、見事にPreviewerが起動し、電子書籍epubデータからmobiデータへの変換と、表示状態のプレビュー確認ができるようになりました。

そこで翻訳&校正で至らなかった部分を訂正した「あしながおじさん」の第3版を出版申請し、つい先ほど販売開始となりました。分かりやすい部分としては、最後にある奥付が「二〇一五年 十二月五日 第三版」となっております。

「あしながおじさん」より


・  ・  ・  ・  ・

なお、Kindle Previewerは、現在のところEl Capitan対応版が出ているのではなく、自力で作業をしなければ起動するようにはなりません。一応、KDPから連絡いただいた方法を、ご参考までに以下に記しておこうと思います。
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1. "Launcher "ファイルを見つける。
【手順】:
① "Kindle previewer"を右クリックしてサブメニューを開く
② "パッケージの内容を表示"を選択する
③ "Contents"の"MacOS"の中に"Launcher"ファイルがあります

Kindle Previewerはそのままダブルクリックすると起動してしまうので 右クリックして「パッケージの内容を表示」を選ぶと開ける
2. 上記の"Launcher"ファイルを"テキストエディット"で開きます。 3. Launcherファイルの中身を以下の内容に置き換えてください。(「# the below command will find java 1.6 from the system」から「fi」までをコピーペーストして内容を置き換えます。) # the below command will find java 1.6 from the system # if previewer fails to start after this, # run the /usr/libexec/java_home -v 1.6 -d32 in command line # to ensure you have installed java 1.6 # the command should return something like "/Library/Java/JavaVirtualMachines/1.6.0.jdk/ # Contents/Home" and no errors # Please copy from the next line till the end and change your launcher file # in Applications/Kindle Previewer.app/Contents/MacOS export JAVA_HOME=$(/usr/libexec/java_home -v 1.6 -d32) dir=`dirname "$0"` cd "$dir" classpath=./:./lib/touchLibs/etc/fonts/fonts for i in `ls ./lib` do classpath=$classpath:./lib/$i done export DYLD_LIBRARY_PATH=. # start the previewer fileExtT=`echo $1 | awk -F. '{print $NF}'` fileExt=`echo $fileExtT | tr '[:upper:]' '[:lower:]'` if [ "$fileExt" == mobi -o "$fileExt" == azw3 -o "$fileExt" == epub -o "$fileExt" == opf -o "$fileExt" == html -o "$fileExt" == zip ] then # opens only the first book in command line. TODO: handle multiple books in command line ${JAVA_HOME}/bin/java -d32 -XstartOnFirstThread -Dfile.encoding=UTF-8 -cp "${classpath}" com.amazon.epub.reader.Main "$1" exit 1 else ${JAVA_HOME}/bin/java -d32 -XstartOnFirstThread -Dfile.encoding=UTF-8 -cp "${classpath}" com.amazon.epub.reader.Main exit 1 fi
 
4. 内容を置き換えたファイルを保存して、閉じます。

5. ここまで進みましたら、Kindle Previewerを起動させ、問題なく動作するかをご確認ください。
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以上です。
  
 
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2015年12月2日水曜日

2015年 1,000ダウンロード達成!

今年7月に、昨年2月の《望林堂完訳文庫》販売開始からの「トータル1,000達成!」のご報告をさせていただきましたが、今回は2015年1月からのトータルダウンロード数が、12月1日の時点で1,000を越えたというご報告です。

2014年は年間トータル数が489でした。販売開始が2月からというだけでなく、書籍タイトルもまだまだ少なかったこともあり(年末までに9タイトル、現在は14タイトル)、単純に比較することはできませんが、昨年の倍を越えるダウンロード数を、本年もまだ一ヶ月を残したこの時点で達成できたことは、ひとえに読者の皆様のおかげです。
   
心より感謝申し上げます。

ちなみにダウンロード数の多い順を並べますと、以下のようになります。

1位 「アルプスの少女ハイジ」 349ダウンロード
2位 「あしながおじさん」   138ダウンロード
3位 「オズの魔法使い」    125ダウンロード
4位 「青い鳥」        122ダウンロード

「アルプスの少女ハイジ」の人気が飛び抜けていますが、「あしながおじさん」「オズの魔法使い」も昨年から安定した人気を維持しています。

目立つのは昨年12月刊行の「青い鳥」が順調に数を伸ばしている点でしょう。この「青い鳥」は原作が戯曲であるため、いわゆるシナリオ形式のレイアウトになっています。以前お話ししました〝ぶら下がりインデント〟です。そのようなこだわりも、皆様に楽しんでいただけている部分ではないかと思っております。

「青い鳥」より

読者の皆様からは、翻訳や校正についての貴重でご丁寧なご指摘やご意見などを、直接メールでいただいたりしております。温かいお心遣い、誠にありがとうございます。

現時点でまだKindle Previewerの不具合は解消されていませんが、どうにか手を尽くして改訂版をアップし、頂戴したご意見を随時反映させていただく予定です。

今後もタイトル数を増やし、各タイトルの品質を向上させながら、《望林堂完訳文庫》をさらに充実させてゆきたいと思っております。

よろしくお願いいたします。


2015年11月24日火曜日

Kindle Previewerの不具合

今年10月末にMac OSが〝El Capitan(エル・キャピタン)〟と呼ばれる最新版にアップデードされました。OS X 10.11.1になります。その結果、Kindle Previewer(キンドル・プレビューア)というソフトが動かなくなってしまったのです。

このKindle Previewerというソフトは、epub(イーパブ)と呼ばれる一般的なデジタルブック形式をmobi(モビ)と呼ばれる、Kindle独自のファイル形式に変換し、同時にKindle上できちんと表示されるかの確認ができるというもので、Kindle書籍を作成・販売する上で、なくてはならないものです。

この夏にMac OSが10.10.5に自動アップデートされた時も、当初Kindle Previewerはうまく動きませんでした。しかしKindle Previewer v.2.94という対応版が配布され、無事動作するようになったのです。

ところがEl Capitanでは、このv.2.94も立ち上がりもしません。Kindle ダイレクト・パブリッシングに問い合わせたところ、「動く可能性がある方法」としていくつか提示していただいたのですが、それらを試してもやはりKindle Previewerは一向動く気配がありません。

そのため、新刊本の販売のみならず、例えば既刊本の校正ミスや翻訳ミスのご指摘をいただいた場合も、改訂版を出すことができない状況です。

誠に心苦しいのですが、Kindle Previewerの不具合が解決されるまで、今しばらくお待ちいただければと思っております。


なお翻訳作業は着々と進んでおります。環境が整い次第、可能なものから新刊本、改定本を出せるように、しっかりと準備しておきたいと思っております。

誠に申し訳ございませんが、ご理解のほど、よろしくお願い致します。

[追記]起動するようになりました! 設定方法はこちら

「ジャングルブック」より


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2015年11月18日水曜日

原著と英語訳と日本語訳

基本的に《望林堂完訳文庫》では、英語作品を日本語訳してお届けしています。でも既刊書の中には、

「アルプスの少女ハイジ」(スイス文学、ドイツ語)
「ピノッキオの冒険」(イタリア文学、イタリア語)
「みつばちマーヤの冒険」(ドイツ文学、ドイツ語)
「青い鳥」(ベルギー文学、フランス語)

など、原著が英語ではない作品も含まれています。どうしてそのようなことが可能なのでしょう? それは、原著の英訳完訳書を見つけて、それを日本語に訳しているからなのです。

ところが、英訳書の場合、完訳かどうかはっきり明記されていない場合がほとんどです。完訳だと思って訳していると、実は抄訳だったりするのです。

そこで、分量的に完訳と思われる英訳書を見つけても、さらに原著のテキストを自動翻訳で英語にして、抜けているところがないかチェックしつつ作業を進めることにしています。時間はかかりますが、〝完訳文庫〟と名乗る上ではこだわりたい部分だからです。

また、こうした内容とは別の点で、〝完訳〟とは言えない部分も出てきます。英訳が違う意味になる場合もありますし、説明を書き足している場合もあります。

中でも意外と多いのが、名前の変更です。オリジナルの単語をそのまま載せても、読者がその発音がわからない(英語にない発音や表記)とか、発音しづらく親しみがわきづらいという〝配慮〟からでしょうか、名前がオリジナルとは別の英語名に変えられている場合が少なくないのです。

例えば「みつばちマーヤの冒険」では、登場人物の名前が次のように変わっていました。

 独語名   / 英語名   (虫の種類)
 ペッピー  / ピーター  (フキコガネムシ)
 シュヌック / ラヴィディア(トンボ)
 クルト   / ボビー   (フンコロガシ)
 フリッツ  / フレッド  (チョウ)
 ヒエロニモス/ トーマス  (ムカデ)

これも、原著と英語訳とを照らし合わせて作業しながら、一つ一つオリジナルの名前を確認し、その発音に近いカタカナ表記を使って日本語に訳してあります。

こうしてできるだけオリジナルの名前にこだわるのは、地名や人名は、読んでいて〝異国〟が感じられる大事な部分だからです。そこに込められた、ドイツらしさやイタリアらしさは、作品のとても大きな魅力の一つだと思うからです。

そういう意味では、オリジナルを〝完訳〟したと言われる英訳書の完訳邦訳ではありませんが、その〝完訳〟英訳書に比べて、よりオリジナルに近い完訳邦訳だと思っております。

ただし、例えば「青い鳥」に出てくる仙女Béryluneは、これまで〝ベリリウンヌ〟(フランス語読み〝ベリリュネ〟とも、英語読み〝ベリリュン〟とも違う)と訳されて親しまれてきているようなので、それにのっとりました。こうした部分をどう判断するかは難しいところです。でもやっぱりHeidiは〝ハイディ〟ではなく、〝ハイジ〟ですものね!



「青い鳥」の挿絵
 
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2015年11月13日金曜日

ばい菌はバイキング!

「砂の妖精サミアド」は原題が「Five Children and It(五人の子どもたちとそれ)」であるように、五人の子どもたち(主に、赤ちゃんを除いた四人の子どもたち)が次々と騒動を巻き起こす物語です。

すでに触れたように、その年齢は作品中では触れられていないのでわからないのですが、子どもたちの会話に出てくる、大人なぶろうとする部分と子どもらしい幼い部分が、大きな魅力であることは確かです。でも、だからこそ翻訳に苦労することも出てきます。

例えば手紙。アンシアが書く文章は、ちょっと気取っていて、でも回りくどく、さらに単語の綴りが間違っています。それをわざわざ英語の単語を示して綴りの違いを説明したら、きっと文章の流れが途切れて興ざめです。

そこで日本語を、わざと間違えることにしてあります。「おいしそう」とか「心から感謝している」という具合です。校正ミスではないことを示すためにヽを打ってあります。



さらに単語の言い間違いも訳すのが大変です。次の文章はgerms(ばい菌)をGermans(ドイツ人)と聞き間違えて覚えていたシリルと、その単語を初めて聞いたアンシアの会話です。

「……この間お父さんが言っていたのを聞いたんだ、人は雨水に含まれているバイキングヽヽヽヽヽで病気になるんだって。ここにはたくさん雨水があったはずさ……雨水がすっかり乾いても、バイキングは残っているから、食べ物の中に入ってしまう。するとぼくらはみんなしょうこう熱にかかって死んじゃうんだよ」
「バイキングって何?」
「顕微鏡で見るとクネクネ動いている小さいやつのことさ」学者のような口ぶりで、シリルが言いました。

アンシアが質問しているように、二人ともGermanがドイツ人という意味になることも知らないで話しています(ですから本来ならGermanですが、小文字でgermanと書かれています)。そうすると「ばい菌」を「ドイツ人」と訳しておいて、注釈をつけたのではおかしなことになってしまいます。さすがに二人も「ドイツ人」は知っているでしょうから、「……ドイツ人で病気になるんだって。……」「ドイツ人て何?」という会話は
変ですものね?


そこで、単に単語を間違えているだけでなく、間違えた単語が別の意味を持っているということを活かしたいために、あえて「ばい菌」を「バイキング」としてみました。


ここは偉そうに難しい単語を使って説明しながら、実は大間違いしている、ちょっと大人ぶったシリルの面白さを伝えたい場面なのです。そのことを優先して、上記のような訳を考えてみたわけです。


ただし、原文中に「バイキング(Viking)」などという言葉は存在しないので、これは一つの冒険です。


まだ翻訳途中なので、最終的に別のかたちに落ち着くかもしれませんが、こうした苦労をしつつ、現在も翻訳作業を続けております。


2015年10月29日木曜日

「砂の妖精サミアド」に見る兄弟姉妹

「砂の妖精サミアド」では、オリジナルのタイトル「五人の子どもたちとそれ(Five Children and It)」通りに、五人の子どもたちが主人公として出てきます。ところがこの子どもたちの細かな設定が良くわからないのです。

物語はロンドンに2年住んだ一家が、田舎の白い家にやって来るところから始まります。servant(召使、奉公人、お手伝い)が家にいることから、イギリスの中流階級の家族です。ところがお父さんは急な仕事で、お母さんはおばあさんの看病で、子どもたちと奉公人たちを残して出て行ってしまいます。

ところが子どもたちは毎日サミアドに願い事を叶えてもらおうと、サミアドのいる砂利取り場へと向かっては、さまざまな騒ぎをひきおこすのです。学校へも行かずに。

ということは一家は引っ越してきたわけではないのかな? 長期バカンスか何かかな? それは書かれていないのです。そのまま物語は進んでゆきます。

でもきっと子どもにとって、そんなことはどうでも良いことなのです。目の前に広がる不思議に一喜一憂するので精一杯ですから。これは、そんな子ども心を思い出させてくれるお話なのです。

さらにその子どもたちの年齢も書かれていません。赤ん坊が一番下の子だということはわかります。でも上の四人については、シリル、アンシア、ロバート、ジェインという名前から、男二人、女二人だとはわかるのですが、その順番が書かれていないのです。会話の中で「シリルが一番年上だから……」という言葉が出てくるのですが、あとは特に年齢も、生まれた順番も書かれていません。


つまり、ここには実に欧米的、ヨーロッパ的な兄弟姉妹のとらえ方が見て取れるのです。例えば英語では「I have two brothers.」などのように、兄弟や姉妹がいるかいないか、いる場合は何人か、だけを言います。生まれた順番は重要ではないということですね。(もちろん必要ならば「elder」や「younger」を使って兄か弟かを示すこともできますが。)

日本の場合は昔から「家督を継ぐのは長男」という意識が(旧憲法では規定も)あったので、いまだに順番が示されないとなんとなく落ち着きません。そういう文化なのです。でもここに登場する五人には、生まれた順番という意識はないし、物語の書き手もそういう点にはまったくこだわっていないのです。

ではどうやって区別されるかというと、あくまで個性の違いなのです。ですから四人の会話も対等ですし、意見や行動もそれぞれがはっきりしています。上の者が下の者を庇護するとか、下の者が上の者に頼るとかいう関係がないので、言葉遣いにも甘えがありません。

そうすると日本語に訳す場合も、日本的な兄弟姉妹な言葉遣いではなくなるのです。「お兄ちゃん」とか「お姉ちゃん」というような言葉を使うと逆に不自然になります。

この、日本的なベタベタした感じも、年齢による上下関係とかもなく、それぞれが個性豊かに自分を主張するところが、日本人にとって新鮮に映るのだろうと思います。四人はいろいろ失敗を繰り返すのですが、それがカラッとしていて笑えるのも、四人の会話が時に漫才のように楽しいのも、実はそんな文化の違いが影響しているのだろうと思います。

ぜひ、そんな部分も感じていただけたらと思いつつ、現在翻訳作業中です。

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2015年9月28日月曜日

次回配本第15弾は「砂の妖精サミアド」

《望林堂完訳文庫》として邦訳を出す児童文学書を選ぶ際に、いくつかこだわるポイントがあります。それは例えば次のようなものです。

・名作と言われながら、きとんとした邦訳書が出ていない。
 (訳が古くて読みづらい/抄訳ばかり、も含む)
・初版当時の挿絵が魅力的である。

もちろん書籍全体でこうしたポイントを満たす作品が、翻訳候補に上がりやすいのですが、Kindle書籍として出す以上、Kindle書籍としてこうしたポイントにひっかかるものも、十分に対象になります。

そこで今回候補の最後に残っていたのが「ドリトル先生航海記」と「砂の妖精」の二点でした。しかし現在のところ、「ドリトル先生航海記」はKindle本が出ているのに対し(残念ながらオリジナルの挿絵は使われていませんが)、「砂の妖精」はKindle本がありません。 

そこで次回配本はE.ネズビット (E.Nesbit)作の「砂の妖精サミアド」ということに決定いたしました。イギリス・ファンタジーの名作です。初版本にはとても美しい挿絵が多数収録されているのも大きな魅力です。 

実はこの「砂の妖精」、「おねがいサミアドん!」というタイトルで1985年〜1986年にNHKのTVアニメになったこともあるという、実は日本と縁の深い作品の一つなのです。同時にまた「ハイジ」や「ピノッキオ」や「マーヤ」などと同じく、アニメは知っていてもオリジナルの完訳を読んでいる人は少ないという、とても残念な名作文学の一つでもあるのです。




原題は「Five Children and It(五人の子どもたちとそれ)」ですが、これまでの邦訳書のタイトルとしては「砂の妖精」あるいは「砂の妖精と5人の子どもたち」となっていました。しかし、もともと1900年に「ストランド・マガジン」で連載された時は「サミアド、あるいは数々の贈り物(The Psammead, or the Gifts)」と、「サミアド」という妖精の名前が使われていたようなので、今回はそれをタイトルに入れて「砂の妖精サミアド」とすることにする予定です。

この、妖精と言うにはちょっとグロテスクなサミアド(そこがまた斬新なところです)と、五人の子どもたちの織りなす楽しい物語です。どうぞご期待ください!


2015年9月19日土曜日

「みつばちマーヤの冒険」販売中!

今朝の6:27にKindle側から販売開始のお知らせがメールで届きました。《望林堂完訳文庫》第14弾「みつばちマーヤの冒険 」販売開始です。



今回は申請から18時間程度で出版となりました。Kindle ダイレクト・パブリッシング(KDP)から出版権についての問い合わせメールが届き、すぐに返事のメールを返したのが申請の約1時間後でした。やりとりはそれだけで、とても素早く処理していただけたと思います。

「今すぐ無料サンプルを送信」を使えば、一部を試し読みすることもできます。ぜひお手にとっていただければ嬉しいです。
  
なお、10月1日からKindle書籍にも消費税8%がかかることになりました。でも《望林堂完訳文庫》は、すべて価格据え置きで、現在のお値段のまま販売いたします。

2015年9月18日金曜日

「みつばちマーヤの冒険」出版申請完了!

第13弾「オズのオズマ姫」出版から約2ヶ月の作業期間を経て、本日ようやく第14弾「みつばちマーヤの冒険」をKindleダイレクト・パブリッシング(KDP)に出版申請いたしました。


KDPのレビュー(審査)を経ての出版となりますが、遅くとも明日からのシルバー・ウィーク期間中には販売開始できるのではないかと思っております。Amazon Kindleブックとして“店頭”に並ぶまで、今少しお待ち下さい。


2015年9月5日土曜日

マーヤたちの敵は〝クマバチ〟ではない!

本日、「みつばちマーヤの冒険」の邦訳第一稿ができあがりました。このお話もとても良くできたお話で、一日も早くきちんとしたかたちでお届けしたいと、あらためて思いました。

以前「ジャングル・ブック」の『白アザラシ』は誤訳で、実は『白オットセイ』だったというお話をしましたが、「みつばちマーヤの冒険」でも、同じような大きな誤解が残されています。

それは、マーヤたちミツバチの敵が〝クマバチ(クマンバチ)〟だ、というものです。そもそも花粉や蜜を食べるクマバチが、ミツバチを襲うことは考えられないのですが、なぜかマーヤたちミツバチの最大の敵が〝クマバチ〟にされてしまったのです。
 
ところが原作ではちゃんとhornisse(英語でhornet)とあり、〝スズメバチ〟なのです。これは日本語化される際の誤訳です。

そもそもクマバチは日本固有種なので、ドイツ人のボンゼルスの頭にクマバチがあったとは思えません。実際、文中でもスズメバチの特徴である「黒と黄色の縞模様の体」という表現が何回も出てきますし、現実にもミツバチの大敵はスズメバチです。

日本では〝クマンバチ〟という言葉がスズメバチを含む大型なハチ全般を指す場合があるそうなので、混同されてしまったのかもしれません。あるいは同じ大型なハチとして「スズメ」よりも「クマ」の方がより凶悪そうに聞こえて、敵としてふさわしいと短絡的に考えられた結果かもしれません。

でもいまだに様々な場所で、「みつばちマーヤの冒険」でマーヤたちミツバチが最後に戦った相手が〝クマバチ〟だと書かれているのを見ると、それだけでも本書を出す意味があるように思われるのです。

もちろんそのほかにも、この物語は魅力がいっぱいです。それは自然界や虫の世界をかなりリアルに見つめつつ、人間味溢れるやり取りやしぐさが描かれるという、絶妙なスタンスがうまく活かされているからでしょう。

さらに、スズメバチも「敵」ではあっても「悪」ではないという、作者の視点がきちんと描かれている点も大きな魅力です。この客観的な視点こそが、この物語にドライな感覚を与え、情に流されない奥の深さにつながっているのだと思うのです。

出版開始のあかつきには、ぜひ多くの方にお読みいただけると嬉しいですね。

マーヤ(手前)と敵のスズメバチ
挿絵のリアル/擬人化のバランスも絶妙です!


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2015年9月1日火曜日

8月は過去最高の売り上げ達成!

読者の皆様のおかげで、この八月は過去最高の月間売り上げを達成することができました。心より御礼申し上げます。

物が売れない月として、良くニッパチ(二月と八月)と言われたりしますが、書籍に関しては、子どもたちが夏休みになる八月は、年末年始(十二月と一月)と並んで、一年で特に売れ行きの伸びる月です。

それでも、まだまだデジタル書籍という発展途上な分野で、こうして望林堂の書籍をお買い求めいただけることは、本当にありがたいことだと思っております。

具体的な数字をご紹介いたしますと、八月全体の売り上げ点数が、全タイトルで114冊。念願の100冊/月を越えることができました。

個別の数字を見てみますと、現在販売中の全13タイトルすべてが、少なくとも1冊以上売れていますが、中でも

「アルプスの少女ハイジ」 42冊
「あしながおじさん」   15冊
「青い鳥」        15冊
「オズの魔法使い」    14冊
「ピノッキオの冒険」   10冊

となっており、「アルプスの少女」ハイジが突出して人気があります。

加えて10冊を越えるタイトルも4点あるというのも中々頼もしい状況で、近刊書の中では「ピノッキオの冒険」が健闘してくれているのが嬉しいですね。

「ピノッキオの冒険」の挿絵


今後も徐々にタイトルを増やしつつ、より充実した「望林堂完訳文庫」として、皆様に喜んでいただけるよう、努力してまいりたいと思います。

ちなみに次回販売予定の「みつばちマーヤの冒険」は、現在翻訳作業が8割ほど終わっております。翻訳作業が完了しても、ルビ付や校正、そして挿絵の配置や文書フォーマット変換などがあるため、現在のところ九月中の販売開始を目指しております。

販売開始時には、本ブログでもお知らせいたしますので、いましばらくお待ち下さい。


2015年8月22日土曜日

「ジャングル・ブック」と『白オットセイ』

「ジャングル・ブック」と言えば、オオカミに育てられた少年モーグリが、仲間の動物たちに森の掟に従った生き方を教えてもらい、やがて宿敵シア・カーンと対決する物語だと思われる人が多いでしょう。

でも正確に言えば原作は違います。確かにその少年モーグリのお話が三編含まれていますが、それ以外にも独立したお話が四編含まれた、短編集なのです。そして独立した四編には、モーグリは出てこないどころか、“ジャングル”とは無関係なお話も含まれています。

とりわけ『白オットセイ(The White Seal)』は、人間によるオットセイ狩りを題材にした海洋冒険物語です。主人公はコチックという白いオットセイ。コチックは人間から殺戮され続ける仲間のオットセイたちを救おうと、孤軍奮闘するのです。

さてこの『白オットセイ』ですが、実はこれまでの 邦訳書では、なぜか『白アザラシ』と訳されていました。手元にある完訳書「学研世界名作シリーズ」でもそうですし、モーグリ物語選集のような本の解説にも、オリジナルの「ジャングル・ブック」を紹介する際に『白アザラシ』と書かれているのです。

しかし原作本文中には、ちゃんと“fur seal”と書かれています。つまりオットセイのことです。舞台となるセント・ポール島も、実際にオットセイが集まる場所として有名です。つまり明らかに誤訳であり、残念なことにそれがまかり通ってしまっているのです。

アザラシとオットセイは違います。アザラシはずんぐりしていて、上半身を起こすことができませんが、オットセイは後ろ足を左右に開いて歩くことができます。つまりコチックの陸上での活発な動きや、仲間たちとの大ケンカは、オットセイだからできることなのです。

さらにこのお話には「カイギュウ(The Sea Cow)」が出てくるのですが、これも現存しているカイギュウ類から、ジュゴンかマナティーのことだと思ってしまうと間違いです。物語中でも“幻のカイギュウ”として扱われていることから、1768年(以降)に絶滅した(人間によって絶滅させられた)ステラー・カイギュウのことだと思われるのです。

だからこそ“幻のカイギュウ”であり、絶滅の危機に瀕したコチックたちオットセイに奇跡をもたらしてくれることに、大きな説得力が生まれるのです。


このように、完訳&新訳することには、読みやすい現代語訳でお届けするということだけでなく、もう一度きちんと訳を洗い直すという意義と責任があると思っています。

ぜひ手に汗握るモーグリとシア・カーンの決戦に加え、悲しくも幻想的な『白オットセイ』のお話も、お楽しみいただきたいと思います。

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